第4回 PCA 法について

先生、術後痛の基本は理解できました!
ところで最近、私の担当病棟では、PCAポンプをつけて手術室から帰ってくる患者さんが増えてきたので、今回はPCAについて知りたいです。
麻酔科の先生が中心に使っていると聞いたのですが・・・PCAって何ですか?

そうですね。新人の看護師さんにはわからないかもしれませんね。
PCAはPatient Controlled Analgesiaの略で、日本語で「自己調節鎮痛法」ということもあります。専用機器であるPCAポンプを医療従事者が設定し、患者さんが痛みのあるときに患者さん自身が操作して、安全かつ効果的な量の鎮痛剤をすぐに投与できる方法です。
痛みは自分自身にしかわからない感覚なので、客観的な評価が難しいものです。PCAでは痛みの状態を一番早く把握できる患者さんが、痛みを感じたときにすぐに鎮痛剤を使えるのが利点です。

病棟で先輩看護師たちが患者さんに、
「痛ければボタンを押して下さい」って声をかけている方法ですよね?

そうです。PCAが導入されるまでは、患者さんが痛みを我慢できなくなると、「ナースコールで看護師さんを呼ぶ→看護師さんが痛みを評価する→主治医の指示を確認するか、医師に連絡して処方をもらう→患者さんに鎮痛剤を投与する」というステップを踏んでいました(図2)。
この間、患者さんは苦痛に耐えなければならないし、夜間などの医療スタッフが少ない時間帯はこの時間が長くなってしまいます。また、忙しそうな看護師さんを呼ぶのをためらい、痛みを我慢する患者さんもいます。
これに比べPCAは、これらのステップをショートカットでき(図2)、必要なときに直ちに鎮痛剤が投与できます。

図2:術後鎮痛、PCA法のプロセス図

図2:術後鎮痛、PCA法のプロセス図

でも、患者さん自身が投与するのって・・・
安全にできるんですか?

PCAは専用ポンプを使って、「(1) 持続投与、(2) ボーラス投与、(3) ロックアウト時間」の3つの基本設定を組み合わせることで安全に投与できます。

(1) 持続投与
ベース速度ともいい、患者さんがボタンを押さなくても持続的に鎮痛剤が投与される設定です。
作用持続時間が短い鎮痛剤の効果持続や、睡眠中に痛みで覚醒してしまうことを防ぐことが目的です。

(2) ボーラス投与
患者さんがボタンを押した時に注入する鎮痛剤の量の設定です。

(3) ロックアウト時間
患者さんの要求による鎮痛剤の投与間隔を制限する時間で、過剰投与にならないための安全設定です。

具体的にはどうやって投与するんですか?

「(1) 持続投与 3mL/時間、(2) ボーラス投与 2mL、(3) ロックアウト時間 10分」という設定だとします(図3)。
この場合、1時間あたり3mLの速度で持続投与が行われます。たとえば15時00分に患者さんが「痛みが出てきたな」と思い、PCAのボタンを押して鎮痛剤を要求したとすると、ボーラス投与量の2mLが投与され、その後10分間はロックアウト時間となります。
この10分間は持続投与はされますが、機械(PCAポンプ)は患者さんが操作してもボーラス投与されない状態となり、15時10分を過ぎたらボーラス投与が可能な状態になります。その後、患者さんが15時20分にボタンを押せば、ふたたび2mLが投与され、15時30分までロックアウト時間になります。
PCAはこれを繰り返していきます。

図3: PCAの設定 パラメータ概念図(持続投与、ボーラス投与、ロックアウト時間)

図3: PCAの設定 パラメータ概念図(持続投与、ボーラス投与、ロックアウト時間)

なるほど...
ところで、これらの設定はどうやって決めるんですか?

まずは、薬剤量の設定を説明しましょう。
PCAのなかで静脈内にオピオイドを投与するiv-PCAの場合、ボーラス投与量はモルヒネ1mgまたはフェンタニル25μg(20-40μg)程度です。これは、患者さんが要求したときに皮下注や点滴静注する量よりかなり少ないです。また、モルヒネは4-5時間と比較的長時間作用し、代謝産物にも鎮痛効果があるので、持続投与は原則として併用しません。
一方、フェンタニルの作用持続時間は30分程度と短く、ボーラスだけでは要求回数が増えるので、持続投与を併用することが多いです。ただし、これも一律に決めるのではなく、患者さんの状態に応じて調節します。

では、ロックアウト時間はどうやって決めるんですか?

ロックアウト時間は過剰投与の防止が目的です。使用する薬剤の投与から作用発現までの時間や、投与ライン内の容量などを目安に決めます。患者さんがボタンを押してから薬の効果が出るまでに数分かかるので、その間にボーラス投与をくり返して過剰投与にならないよう、最低限その時間は不応期として設定します。通常、オピオイドの静脈内投与であれば10分程度です。

なるほど...だんだんわかってきました!
この方法って、私たちがこれまでやっていた方法に比べるとかなり斬新ですね。
最近開発された方法なんですか?

たしかに、国内では最近10年ほどで急速に普及しはじめているので、新しい方法だと思うかもしれませんね。でも、欧米では30年くらい前から一般的な鎮痛法として普及しています。
では次回は、PCAの原理について説明しましょうか。

よろしくお願いします。

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