第2回 術後鎮痛法の種類:硬膜外鎮痛法

先生、第1回で術後痛の基本がわかった気がします。
ありがとうございました。
術後の痛みをきちんと管理することで、患者さんの早期回復につながるんですね。

そうなんですよ。
では今回は、術後管理の方法について勉強しましょう。
知っている術後管理の方法はありますか?

外科病棟の先輩看護師から、「エピ」とか
「アイブイピーシーエー」などの言葉をよく聞きます。
術後の痛みの管理方法なのは分かるけど・・・
どんな方法かよくわかりません。

いろいろな方法があるから、覚えるのは大変だけど、どれも重要な方法です!
まず今回は、「エピ」について解説しましょう。
エピはEpiduralの略で、日本語で言うと「硬膜外腔」を指します。
エピと言われているものは、硬膜外鎮痛法のことです。

硬膜外腔くらい知っていますよ~。脊椎の中にある硬膜の外側のことですよね?

正解!硬膜の外側のスペースを硬膜外腔と呼びます。
硬膜外腔に細いカテーテルを挿入、留置し、局所麻酔薬やオピオイドを持続投与する方法です。
脊髄やその周囲の神経線維に麻酔薬やオピオイドが浸透することで、脊髄神経の分節に応じた鎮痛効果が得られます。
硬膜外鎮痛法は、硬膜外カテーテルを使って術中から術後まで鎮痛剤を持続投与できるという利点と、体動時の鎮痛効果が高いという利点があるので、これまで術後鎮痛法の中心的な役割を果たしてきた方法です。

硬膜外腔の拡大図はこちら

硬膜外鎮痛法はどの様な手術後の患者さんが対象ですか?

理論的には、脊髄神経が支配している頚部から足までの範囲の鎮痛が可能です。
しかし実際は、安静時の痛みが強く、体動時には更に痛みが増強する「開胸手術」、「開腹手術」、「股関節や膝関節手術」後の患者さんに用いることが多いです。

硬膜外鎮痛法の利点は何ですか?

オピオイドの全身投与と比べて、以下の3つの利点があるというエビデンスが報告されています。
1.体動時の痛みに対する効果が優れている。
2.呼吸合併症が出ない。
3.術後の消化管機能回復が早い。
この他にも、循環器合併症が少ないという臨床研究報告もあります。

逆に、硬膜外鎮痛法の欠点ってありますか?

数千~数万例に一例と稀に、硬膜外血腫や膿瘍などが生じ、場合によっては非可逆的な神経麻痺症状の発生リスクがあります。血液凝固異常や脊柱の病変がリスクファクターと考えられています。
最近は、血栓性疾患を併発していて、抗凝固療法を行っている患者さんが増えているので、リスクと利点を考えながら症例を選択しましょう。

なるほど~。最後に質問!
硬膜外鎮痛法を行う患者さんのケアで重要なことは?

一番重要なことは、下肢の知覚・運動障害の有無を常にモニターすることです。下肢の知覚・運動障害の原因の多くは局所麻酔薬の濃度や投与量によるものですが、硬膜外血腫や神経損傷でもこれらの症状が発生します。そこで鑑別が重要になるんです。
特に、硬膜外血腫の場合、緊急MRIや血腫摘出術等の緊急対応が必要になります。下肢の知覚・運動障害は離床遅延、転倒、皮膚障害の原因にもなるので、投与量の減量や中止をして病状の変化をとらえ、病状が進行する場合は直ちに医師に報告しましょう。