第6回 術後鎮痛法に用いる薬剤:局所麻酔薬、オピオイド

前回(第5回)で、PCAは患者さんの個人差や病態の変化に適応できるすばらしい方法だとわかりました!
でも、薬の副作用対策が必要というところで終わったので、
今回はその話を教えてください。

そうですね。副作用対策を理解するために、まず鎮痛薬についてお話しましょう。
硬膜外投与では「局所麻酔薬」と、モルヒネやフェンタニルなどの「オピオイド」を併用することが多く、iv-PCAでは「オピオイド」を使います。

モルヒネやフェンタニルなどの「オピオイド」...
今さらですけど...「オピオイド」って“麻薬” のことですか?

オピオイドは中枢神経のオピオイド受容体に結合して薬効を生じる薬剤の総称で、モルヒネやフェンタニルはこの機序で強い鎮痛効果を発揮します。“麻薬”という用語は『麻薬及び向精神薬取締法』で規定された法律上の分類で、全ての「オピオイド」が“麻薬”というわけでなく、またすべての“麻薬”が「オピオイド」というわけでもありません。
ただし、モルヒネやフェンタニルは医療用麻薬なので、法律に従った管理が必要です。管理方法については薬剤師さんにアドバイスをしてもらいましょう。
また、“麻薬”という言葉から常用性等が心配かもしれませんが、「術後痛で使用される程度の量では心配ないこと」を患者さんにも十分説明しましょう。

オピオイドと麻薬はイコールではないんですね~。
それに鎮痛効果が高い薬だから、「術後の痛みが強い時期はIVや硬膜外で使いましょう!」
ということなんですね。ところで、局所麻酔薬はどうやって効くんですか?

局所麻酔薬は、神経細胞の活動を抑制する薬剤で、痛みの感覚の伝導・伝達を遮断して痛みをとります。
硬膜外腔や末梢神経周囲に投与すれば、支配領域の鎮痛が可能です。
硬膜外鎮痛で局所麻酔薬を投与することの大きな利点は、体動時の鎮痛効果が高いことですね。

硬膜外では局所麻酔薬とオピオイドを併用することが多いのは、
何か理由があるんですか?

硬膜外投与でオピオイドを併用するのは、もちろん鎮痛効果が得られるからですが、局所麻酔薬の弊害と関係があるんです。弊害としては、交感神経遮断による血圧低下、知覚・運動神経の遮断による皮膚感覚や下肢の運動機能低下です。最近用いられている局所麻酔薬は、低濃度では運動神経に作用しにくく、投与量が多くなれば症状は出やすくなってしまいます。
鎮痛機序が局所麻酔薬と違い、血圧低下や運動神経遮断作用がないのでオピオイドは硬膜外投与することで、鎮痛効果を向上させて局所麻酔薬の必要量を抑えることができます。その結果、局所麻酔薬の弊害を避けつつ鎮痛効果を得ることができます。

なるほど!
ところで・・・オピオイドの副作用って、緩和ケアでもよく聞く
嘔気・嘔吐、便秘、鎮静、呼吸抑制などですか?

そうですね。
過鎮静、呼吸抑制は鎮痛のための有効血中濃度以上に達する投与量で起きます。一方、嘔気・嘔吐、痒みは有効血中濃度以下でも発現しうるので、予防が必要なことが多いです。便秘は消化管機能の回復遅れという形で生じることがありますよ。

呼吸抑制にはどんなモニターが必要で、
呼吸抑制が発生した場合、どうればいいですか?

呼吸数を測定する機械的モニターは、集中治療室等で使うことがありますが、一般病棟では難しいのが現状ですよね。
一般的には呼吸数を1分間測定し、8回未満であれば患者さんに呼吸を促します。反応が鈍いときには酸素を投与して医師に連絡しましょう。このようなときは、オピオイド拮抗薬のナロキソンを投与することがあります。

嘔気・嘔吐は患者さんがつらいし、
食事にも影響しますよね?

術後の嘔気・嘔吐はPONV(Post Operative Nausea and Vomiting)
といって、痛みに匹敵するいやな症状です。
それに術後管理の目標は早期回復なので、栄養管理の面からも避けたいですね。
ところで、嘔気・嘔吐というと、緩和ケアでもオピオイドの影響をまず考えますよね。たしかにPONVでもオピオイドは危険因子ですが、オピオイドのせいだけでPONVが起こるわけではありません。それ以外に

「女性」「非喫煙者」「乗り物酔いまたはPONVの既往」

が同等の危険因子といわれ、これらが重なるほどPONVの発生率は高くなり、これらすべてに該当する患者集団では80%の頻度になります。

PONVを防ぐにはどうすればいいですか?

「PONVがある」というだけでオピオイドをやめてしまい、しばらくして患者さんが痛がってしまう、というのはよくありません。
オピオイドは中等度~強度の痛みを抑えるのにとてもよい薬です。そこで、積極的に制吐剤を使用して予防する医師が増えていますし、PONVの危険因子が多い患者さんには、複数の予防策をとることをお勧めします。
また、非ステロイド性消炎鎮痛薬や局所麻酔を併用してオピオイド使用量を減らす工夫もできます。PCAは、オピオイド投与量を必要最小限にできるという点で有用ですよ。

なるほど…危険因子を考えた上での対応が、PONVの場合必要なんですね。
その他に気をつけることはありますか?
神経障害が起きるケースも聞いたことがあるような・・・

いい質問ですね!
きわめて稀ですが、硬膜外鎮痛に関連して神経障害が生じ、なかには麻痺症状が残ってしまうことがあります。これは針による神経損傷や硬膜外腔の細菌感染でも起きますが、稀ななかでも多い原因は硬膜外腔での血腫形成です。
これが発生した場合、早期に血腫を除去する必要があることがほとんどです。

硬膜外血腫ですね。稀だけど、起きると元に戻らないこともある…
ということは、早期発見が重要そうですけど、どうすればいいですか?

特徴的な症状を覚えておきましょう!

(1) 背中や腰の痛み
(2) 脚や胴の感覚が鈍る
(3) 脚が動きにくくなる

の3つの症状が特徴です。
どれかひとつだけのこともあります。
硬膜外鎮痛では、局所麻酔薬の効果によって皮膚感覚や脚の運動機能が低下することがあるので、「症状の変化を捉えること」が大切です。(1)~(3)のどれかが突然発生した場合や、(2)、(3)の範囲や程度が少しでも拡大・進行した場合、この合併症のことを念頭において担当医や麻酔科医へ報告、相談しましょう。
また「(1)~(3)のようなことが起きたら教えてください」と患者さんに伝えて、みんなで合併症を減らす工夫をすることもできると思います。
そのほかにも硬膜外鎮痛では、カテーテルの抜去や折れ曲がりによって効果が現れなくなることもあるので、カテーテルの確認も必要ですよ。

より安全に、使いやすく進化した電動式PCAポンプ アイフューザー プラス

より安全に、使いやすく進化した
電動式PCAポンプ アイフューザー プラス

関連情報