JMSフットケアWEBセミナー2022
■ 2016年下肢末梢動脈疾患指導管理加算から現場は改善しているのか? 佐賀大学医学部形成外科 石橋 理津子先生
石橋 理津子先生 ご略歴
佐賀大学医学部付属病院
形成外科技術補佐員看護師
前職、天神会新古賀病院にて、2006年九州初の足専門外来を設立
2009年 日本フットケア学会認定フットケア指導士看護師
2009年 日本褥瘡学会認定褥瘡看護師取得、日本静脈学会認定弾性ストッキングコンダクター取得
2012年 糖尿病重症化予防フットケア加算研修受講
2014年 筑後地区糖尿病療養指導士取得
2015年 日本下肢救済・足病学会認定足病認定師取得
2015年 日本フットケア学会秋季久留米セミナー大会長
日本フットケア・足病医学会 評議員
日本フットケア・足病医学会九州沖縄地方会 世話人
日本脈菅学会CVTナースの会 世話人
フットケア技術協会(JAFTA)理事
日本褥瘡学会
日本抗加齢学会
現在、中核基幹病院や透析施設において足病変予防のためのフットケアシステム構築及び技術指導訪問看護ステーションと連携し、訪問フットケア介入民間セラピスト(鍼灸整体師)と共に一般市民の足トラブルケアを実施医療・民間をつなぐ活動を行っている。
2016年に制定された下肢末梢動脈疾患(PAD)指導管理加算は、背景に下肢病変によって切断する患者が多く、他科に紹介しても治療に難渋するケースが少なくないという状況があり、下肢救済、切断率を下げるために設けられました。この加算では、慢性維持透析を実施しているすべての患者を対象にして、PADに関するリスク評価と指導管理を行い、月1回を限度として100点が認められています。臨床所見や検査実施日、検査結果や指導内容は診療録に記載して、ABI検査で0.7以下、SPP検査で40mmHg以下の患者については、同意を得た上で、循環器科や血管外科など専門的な治療体制のある医療機関に紹介します(スライド1)。
PAD指導管理加算を届け出た施設の割合は、2018年は全国4,026施設の76.7%が届け出ており、2022年7月現在では全国の施設数は4,563施設に増えて、届出率も78.4%に増加しています。全国の総数としては増加傾向ですが、都道府県のなかには届出割合が減少しているところもあります(スライド2)。下肢救済については、2016年以降も透析患者の下肢切断率は減っていないと報告されています。当初の目的が達成できていない要因には何があるのか、現場で考えるべき時期にきています。
スライド1 ▶ 下肢末梢動脈疾患(PAD)指導管理加算
スライド2 ▶ PAD指導管理加算届出割合
■ 透析クリニックでの血流評価 ーポケットLDF を活用してー 津みなみクリニック 総看護師長 坂田 久美子先生
坂田 久美子先生 ご略歴
2010年 津みなみクリニック入職
2017年 フットケア指導士取得
2018年 血管診療技師取得
2019年 慢性腎臓病療養指導士取得
2021年 腎代替療法専門指導士取得
中部バスキュラーアクセス研究会 世話人
日本腎不全スキンケア研究会 世話人
バスキュラーナースの会 代表世話人
VA超音波研究会 世話人
2016年から、下肢末梢動脈疾患指導管理加算が始まりました。目的は、血流評価を行って下肢閉塞性動脈疾患を早期発見し、大きい病院に紹介して早期治療を開始することにあります。下肢閉塞性動脈疾患と腎不全の合併頻度は、透析導入期で24.3%、維持期は32.7%とされ、その約70%は無症状です。症状が乏しいまま急速に重症化する場合があり、血行再建治療を要する虚血肢(CLTI)患者の半数が、透析患者というのが現状です。慢性維持透析を実施している患者のうち、四肢切断患者数とその割合の推移に目を向けます(スライド3)。2016年から加算が算定できるようになりましたが、切断患者数、切断率ともに減っていません(スライド3)。
下肢末梢動脈疾患指導管理加算では、ABI測定の間隔は年1回を推奨しています。スクリーニングとしては有用ですが、透析患者の血管は石灰化しているため、ガイドラインでも末梢での血流評価が必要とされています。このため多くの施設では、月1回のフットチェックが行われています。足背動脈と後脛骨動脈の触知、皮膚色や状態の変化、冷感、しびれ、疼痛の有無などをチェックしますが、視診や触診、自覚症状には個人差があり、CLTI予備群を確実に見つけ出すのは困難です(スライド4)。
血流は数値化してモニタリングした方が良く、透析患者は週3回、同じ時間に来院しますので、同じ条件で血流測定することが可能です。当院ではポケットLDFを用いて、透析開始から30分以内に、第1趾に専用のクリップを用いて測定します(スライド5)。測定値は、アプリのポケットLDF viewerを用いて数値化したものを出力します。フットチェック表をバージョンアップして血流量を記載し、測定結果が低値の場合はABI検査などを行うので、記入欄も作成しました(スライド6)。ポケットLDFは操作が簡便で、短時間で測定可能です。受診や精査につなげる簡易モニタリングツールとして有用です。
スライド3 ▶ 下肢末梢動脈疾患指導管理加算後の切断率
スライド4 ▶ 加算について
スライド5 ▶ レーザー血流計
スライド6 ▶ フットチェック表をバージョンアップ
座談会 ポケットLDFの活用法をさぐる
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加納 智美先生 ご略歴
2017年 2月 独立行政医療法人 桑名市総合医療センター入職
2019年 10月 独立行政医療法人 桑名市総合医療センター看護部 師長
日本フットケア・下肢救済足病学会
日本腎不全看護学会
フットケア指導士
日本心理学会認定心理士
循環器科のクリティカルパス作成をきっかけに、透析サテライトとのASOの連携パス作成し、外来でも「フットケア」を行った結果、足病変再発率や下肢切断率の低下に繋がることを実感し、以後フットケア技術等の啓発に取り組んでいる。
千葉 康雄先生 ご略歴
医療法人社団 嬉泉病院 臨床工学科 所属 科長
医療安全管理者
1997年 臨床工学技術士 取得
2000年 医療法人社団 嬉泉病院 入職
2010年 医療安全管理者 取得
○ ポケットLDF測定のタイミングは、透析開始時、中間時、終了時、どこがいいですか。
○ ポケットLDFは2台必要ですか。
○ ABI検査やSPP検査では左右差はないのに、ポケットLDFで左右差が出る理由は何でしょう。
○ 不随意運動があるときの注意点は。
○ 最後にみなさんからひとことを。
■ 総括
私の母親も10年間透析を受けて、血行が悪くて針の上を歩いているようだと何年も言いながら亡くなりました。今回は新しい血流評価の医療機器を紹介しながら、2016年の下肢末梢動脈疾患指導管理加算に対して、きちんと結果を残すためにポケットLDFを有効活用したいという結論に達しました。そのためには使用マニュアルの必要性が高まっています。今後、透析医や検査技師の先生方にも参加していただいて、第2弾を企画したいと思います。