キュアセンス®輸液ポンプ IP-100

輸液ポンプの更新を機に
輸液ラインの見直しや運用マニュアルを整備

飯田市立病院では、輸液ポンプの一部が経年劣化しており
安全面に課題を抱えている状況を踏まえて、見直しを図ることにしました。
また、これを機に安全面の強化、ユーザビリティ、ランニング(消耗品)コストについて
重点的に比較検討を重ねた結果、これまでとは異なる輸液ポンプや輸液ラインを選定しました。
今回、中心となって取り組んだ臨床工学科科長の伊藤亜貴彦さんと副看護部長の原由美子さんに、
新機種の導入に至るまでの経緯や導入後の感想などについて伺いました。

■ デモや病棟説明会、アンケートを実施し3社に絞り込む

原由美子 副看護部長
伊藤亜貴彦 臨床工学科科長
 飯田市立病院は1951年の開設以来、長野県飯田下伊那地域の住民の健康を支える総合病院として発展してきました。現在、病床数は407床、診療科目32科を擁しています。
 同院では、アンチフリーフロー機能が付加された輸液ポンプと付加されていないポンプ、計210台を保有していました。そのうち80台が10年以上使用し、更新の時期を迎えていました。そうした折、伊藤さんは他院で、自院と同じ機種の輸液ポンプが気泡を検知せずに、そのまま輸液が流れる事例があったことを知り、気泡センサだけの輸液管理に不安を抱くようになりました。
 一方、原さんはポンプだけでなく、輸液ルートの見直しも図りたいと考えていました。その理由について「当院では閉鎖式ラインが全面に導入できておらず、末梢ラインは開放式三方活栓で、エキステンションチューブを組み立てて使用しており、感染対策上の課題がありました。さらに手技が統一されておらず、個人個人や部署によっても異なる等、管理面における課題もありました」と話します。
 伊藤さんは各メーカーのホームページや学会などで得た情報から候補機種を洗い出し、メーカーの説明を受けたのち3社に絞り込みました。
 その結果を受けて原さんと伊藤さんは病棟師長を中心とする輸液ポンプ選定ワーキンググループを立ち上げました。ワーキンググループでは、3社製品のデモや病棟説明会、アンケートを実施し、1社製品を第一候補としました。それがJMS社の滴落検知器付きのキュアセンス輸液ポンプIP-100(以下、IP-100)とプラネクタシステムです。
 最終チェックのため2病棟で試用し、問題なく変更できることを確認し、採用を決定しました。

■ ポンプの操作性や輸液セットのコストが選定のポイントに

 JMS社製品を選んだポイントについて伺いました。IP-100についてまずお二人が挙げたのが、タッチパネル操作のしやすさです。
 「必要なボタンがタッチパネルに自動的に出てくるので、ボタンを探す必要がありません。直感的に使用できるインターフェースとなっているのでわかりやすいとの声が多くありました。操作のしやすさは安全につながります」(原さん)
 「電源を入れさえすれば、ほとんどの人が戸惑うことなくスムーズに操作できていました」(伊藤さん)
 輸液ポンプは、基本的に患者さんの状態があまりよくないときに使われます。「IP-100は軽量で、装着も簡単です。急いで輸液ポンプの用意をしなくてはいけない状況下において、私たち看護師には大きな魅力です」と原さんは評価します。
 IP-100に付加した滴落検知器に関して、伊藤さんは「最初に説明を受けたとき、安全面の強化は図れるけれど、看護師にとって使い勝手はどうなのだろうと気になりました」と打ち明けます。
 というのは、伊藤さんはかつて、エレベーターの乗り降りなどちょっとした振動でも滴落検知器のアラームが鳴って困ったという経験があったからです。原さんも同じ印象をもっており、「看護師たちは、アラームが鳴りすぎて看護業務に支障を来すのではないかと心配していました」と話します。
 伊藤さんたちは、JMS社の滴落検知器はどうなのか、検証してみました。結果は、「むしろ鳴らすのが大変なくらいでした」(伊藤さん)とのことで、その不安は払拭されました。
 「当院では、これまでポンプ用ルートと自然落差用ルートの2種を使っていました。落差管理していた患者さんが急変し、輸液ポンプに変更する場合、ポンプ用ルートを新たに準備しなければなりませんでした。しかし、IP-100の汎用セット『JYモード』であればその必要はなく、落差からすぐにポンプに繋げられますし、かけ間違いの危険もありません。もう一つ見逃せないのがコストです。一般的にポンプ用ルートの閉鎖式ラインは高額ですが、落差用で輸液ポンプにも使用できるJMS社製品は、全面閉鎖式にしたとしても、トータルコストがこれまでとほとんど変わらないことも決め手となりました」(原さん)

■ チューブ長やルートの調整、チューブ材質変更による運用見直しを行う

 輸液ポンプの更新について本格的に検討を始めたのは2023年6月で、その後導入までに当初の予定より3カ月延び、9カ月間かかりました。その要因は、途中で抗がん剤の調製・投与時に使用する閉鎖式薬物移送システム(以下、CSTD)の選定も行ったことでした。
 輸液ポンプの選定に伴い、従来のCSTDシステムの運用についても変更が必要となってきます。伊藤さんは薬剤部に何度も足を運び、新しい輸液ポンプとラインに変更することのメリットを説明しました。
 実は、新たに加わった課題は、CSTD選定だけではありません。
 「私は物品購入委員会のメンバーなのですが、その委員会に入っている麻酔科のドクターから、『手術室に入室する際にチューブが長すぎたり、短すぎたりすることがある。この際、チューブ長の調整や20滴・60滴/mLのルート整備、チューブ材質変更による運用見直しも行ってはどうか』と提案されました」(伊藤さん)
 これらの新たなミッションを進める際に大変だったのが、各部署の現状整理と組織横断的な調整活動でした。
 例えば、伊藤さんたちは薬剤部に頼んで、輸液セットの材質に吸着する薬剤を使用する病棟リストを出してもらいました。「薬剤部では以前から、こうした薬剤にもポリ塩化ビニル(以下、DEHPフリー)のチューブを使っていることが気になっていたそうです。薬剤がチューブに付着され続けると、期待する薬効が得られなくなります。輸液ポンプ更新と共に、新たに導入した一体型閉鎖式輸液ラインは、PVCフリーチューブを組み込んでおり、薬剤吸着の課題解決につながりました。薬剤部では、チューブに吸着する薬剤に紙を貼って、新しい輸液ラインを必ず使用するよう病棟スタッフに周知を図ることにしました」(伊藤さん)。
 他方、解決しなければならない問題が生じました。これまで同院ではDEHPフリーチューブを主に使用し、そのまま造影検査を実施していました。PVCフリーのチューブでは、造影剤を高圧注入する際の耐圧性が不足します。一体型閉鎖式輸液ラインはPVCフリーのチューブが組み込まれているので、造影検査を行う場合は、別ルートを新たに確保しなければなりません。この作業を、病棟スタッフが行うには負担が大きすぎると問題になったのです。
 「師長会でチューブの材質についての勉強会を開き、一体型閉鎖式輸液ラインへの変更の必要性を現場スタッフに再認識してもらうとともに、外来看護師長と相談し、外来で別途、造影用のルートを確保する運用にすることにして、病棟スタッフの業務負担が増えないようにしました」(原さん)
 このように伊藤さんや原さんはさまざまな部署に働きかけながらミッションを進めていきました。

■ 無線LANによる遠隔監視を活用して輸液ポンプの稼働率を算出予定

 2024年3月末、IP-100およびプラネクタシステムが導入されました。導入1週間前には、輸液関連製品を使用する全スタッフを対象に、メーカー担当者が説明会を実施。導入後1週間は、取り扱いに困った時も対応できるよう、メーカー担当者が待機していました。「現場の看護師が戸惑った際にしっかりフォローできるように、特に主任や主任補佐は何度もレクチャーを受けました。導入当初にはいくつかのトラブルも発生しましたが、2週間ほど経つ頃には、スタッフたちは取り扱いに慣れ、問題なく運用できるようになりました」(原さん)
 導入3カ月後に伊藤さんたちは看護師を対象にアンケートを実施しました。例えば、ポンプの操作性については難しいと答えたのは4%ほどで、ほとんどの人からは問題ないとの回答が得られました。
 「総じて否定的な意見は少なかったです。最初は運用マニュアルどおりにしていたけれど、次第に自己流で行うようになった人がいることもわかったので、再度運用マニュアルの周知徹底を図るつもりです」(伊藤さん)
 新しい輸液ポンプには無線LANユニットが搭載されており、輸液ポンプの稼働状態を遠隔監視することができます。「全部の輸液ポンプが貸し出されているけれど、病棟で保管されて臨床で使用されていないことが散見されます。今後はリアルタイムにモニタリングを行い、正確な輸液ポンプ稼働率を算出したいと思っています。現状では、遠隔監視できるのは100台となっています。今後は200台に増やしてほしいですね」(伊藤さん)
 この言葉を受けて原さんは、「看護業務の中で負担が大きいのが記録作業です。今後、輸液ポンプに設定した流量や予定量などが自動的に電子カルテに記載されるようになれば、看護業務がかなり軽減されます」と今後の開発に期待を寄せます。
 最後に、今回の導入を改めて振り返っての感想をお二人に語っていただきました。
 「患者さんの安全性が高まり、感染対策にもなり、コストもそれほど上がらず、うまく導入できたという達成感を覚えています」(伊藤さん)
 「一方的に私たちの考えを各部署に押し付けるのではなく、現場の話を聞き、問題点を抽出して解決策を考えていったことがスタッフに受け入れられたのではないかと思います」(原さん)

飯田市立病院 Iida Municipal Hospital

開 設 1951年
所在地 長野県飯田市八幡町438番地
病床数 407床
職員数 732名(2024年9月現在)
診療科 内科、心臓血管外科、眼科、脳神経内科、呼吸器外科、耳鼻いんこう科・頭頸部外科、
循環器内科、整形外科、皮膚科、呼吸器内科、リウマチ科、放射線科、消化器内科、
リハビリテーション科、麻酔科、腎臓内科、小児科、救急科、内分泌内科、産婦人科、
病理診断科、糖尿病代謝内科、泌尿器科、臨床検査科、緩和ケア内科、形成外科、
歯科、外科、脳神経外科、歯科口腔外科、消化器外科、乳腺外科