千葉県千葉市
三橋明生病院
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1947年に開院以来、「患者様第一主義」を基本理念に地域に根差した診療を展開してきた三橋病院は2008年に医療法人社団明生会の関連施設となり、2022年同法人と合併。病院建物が老朽化したこともあり、2023年12月フルリニューアルするとともに、名称も三橋明生病院に変更して新たなスタートを切った。ハードの充実に加え、強力な人材も加わり、地域医療への貢献度をさらに高めている。 |
■ 「5Sスピリット」の基本理念を掲げる

田畑祐輔 理事長

三橋 修 院長
2024年9月現在、同グループは、9カ所の透析施設と介護福祉施設16施設・37事業所を抱えている。
現理事長の田畑祐輔氏は、「私たちは患者様にとって『何が今必要か』を常に考えてきました」と話す。透析施設を増やしてきたのは、まさにそれが透析患者にとって必要だったからにほかならない。田畑氏はこうも話す。「当法人は、Smile(笑顔)、Smart(賢く)、Speedy(素早く)、Secure(的確に)、Service(思いやりのある接遇)の頭文字からなる『5Sスピリット』を基本理念に掲げています。スタッフは皆、このスピリットのもとで動いてくれています」。
■ クリーンルームの手術室を完備。全身麻酔下での整形外科手術を開始

全身麻酔下での整形外科手術が行われるクリーンルーム手術室
三橋病院のベッド数は一般病床38床・療養病床33床の計71床だった。ADL(日常生活動作)が低下するなどして長期療養が必要な患者の受け入れの要望は強かったが、療養病床33床は常にほぼ満床状態だったため、その要望に十分に応えられていなかった。そこで三橋明生病院(以下、新病院)では90床(一般病床40床・療養病床50床)に増床し、それまで一般病棟でも一部行っていた病棟透析を建物3階と4階の療養病棟での実施に統一した。また、病棟透析を受けている患者がリハビリテーションを受けやすいように、1階だけでなく、4階にもリハビリテーション室を設けた。「新病院は明生会グループの中核施設でもあります。療養病床が増えたことで、明生会グループの他施設からの透析患者さんもかなり受け入れられるようになりました」と新病院院長の三橋修氏は話す。透析医療だけでなく、地域密着型の一般病院として健康診断、胃・大腸内視鏡検査などの各種検査を行い、地域住民の健康管理にも注力している。
透析患者は高齢者が多いこともあり、骨折しやすいことがわかっている。しかし、そうした患者は治療が難しくリスクが高い。そのため受け入れを断る医療機関が多いのが現状だ。
新病院では高度な清潔環境を保つクリーンルームの手術室を完備した。これにより、田畑理事長の専門である整形外科では、全身麻酔下での大腿骨骨折手術をはじめ、人工関節手術や脊椎手術などを積極的に実施しはじめた。「100歳以上の人であろうが、どんな人でも手術を行うことを基本としています」と語る田畑氏の言葉は力強い。新病院になってから、実際、他病院から紹介されて同整形外科で手術を受ける透析患者は急増中だ。
もう一つ注目すべきは、2024年4月より整形外科手術が必要な救急患者の受け入れを始めたことだ。これには、同年4月から同病院に非常勤で務めはじめた織田成人氏の大きな尽力があった。

透析ベッドが増床された外来透析室

MRIをはじめ検査機器も充実させた
■ 千葉大学病院や市立海浜病院、市消防局と連携

織田成人氏
織田氏のやりたいこととは日本版LTAC(Long Term Acute Care=長期急性期医療)施設をつくること。
「米国では急性期治療が終わったあと、人工呼吸器や透析など人工補助療法が外れない人を受け入れる施設が多くあるのですが、日本は非常に少ない。かといって急性期病院に長く居続けることもできません。行き場がなくて困っている患者さんをこれまでにたくさん見てきて、何とかしたいとずっと思っていました」と織田氏は語る。
こうした考えを織田氏が田畑理事長にプレゼンしたところ、田畑理事長もすぐに賛同した。
日本版LTAC施設計画の第一歩として織田氏がまず取り組んだのが病院間連携だった。
織田氏がかつて勤務していた千葉大学病院救急科では、「CHIBA e-link」という救急病院連携コンソーシアムを組織している。その連携病院に新病院が加わったのだ。
「LINE WORKSを通して同病院救急科から直接、私に連絡が来るようにしました。先週も千葉大学病院救命救急センターで受け入れた大腿骨頸部骨折の患者さんを新病院で引き取り、明日手術予定です。高齢者の大腿骨頸部骨折や腰椎圧迫骨折は救急搬送される頻度の高い疾患です。しかし、高齢者の患者さんを受け入れ、手術までしてくれる病院は千葉市内にほとんどありません。大学病院の整形外科も予約で一杯で、緊急手術を入れることは難しいのが実態です。救急関係者は新病院のような医療施設を待ち望んでいたと言っても過言ではありません」と織田氏は強調する。
以前から千葉市は政令指定都市の中で救急の到着を経て医療機関に収容されるまでの時間が最長という問題を抱えていた。その解決の一助になりたいと田畑理事長と織田氏は千葉市消防局を訪ね、連携を申し出た。それ以降、整形外科治療が必要な患者についての救急隊からの電話は田畑理事長に、内科系疾患の患者は織田氏が直接受け取るシステムを整えた。「内科系疾患の患者すべてを当病院が受け入れることはできませんが、長年の経験からどこの施設だったら受け入れ可能かというアドバイスをしています」と織田氏は言う。
千葉市立海浜病院ともLINE WORKSとは別のチャットツールで織田氏は連絡を取り合っている。「新病院の入院患者さんが誤嚥性肺炎になり人工呼吸器が必要となったので、海浜病院に送って気管切開手術を受けてもらいました。病状が落ち着いたら新病院に戻って療養していただく予定です」。
織田氏は人工呼吸器を装着した患者を受け入れたいと、重症患者の診方や救命処置の仕方、人工呼吸器の勉強会を始めた。「看護師たちは非常に勉強熱心で、育っていく様子を見るのが大きな楽しみ」と織田氏は嬉しそうだ。

リハビリテーション室には高齢者も安全に使用できるマシンを設置
■ スタッフ教育や離職対策に熱心に取り組む看護部

後藤真希 看護部部長

アルティーリ千葉と協力して開催したバスケットクリニックに
参加した子どもたちのサインが飾られた受付
参加した子どもたちのサインが飾られた受付
新病院となって療養病床が増え、かつ療養病棟で透析を行うようになったが、透析看護ができるスタッフ不足などはなかったのだろうか。
「5年ほど前から透析看護の経験がないスタッフたちに研修を行ってきましたし、新卒を募集するなどして人材確保にも努めてきました。現療養病棟では重症透析患者も受け入れており、安全に透析が行えるよう、さらに教育を充実させていきたいです」(後藤氏)。
田畑理事長や織田氏の新たな取り組みについても、「地域のために動こうとしている先生方に刺激を受け、私たち看護師もモチベーションが高くなっています」と歓迎する。
せっかく育ったスタッフが離職することを避けたいと、年2回、各部署看護師長による面談を実施し、スタッフの悩み事などに耳を傾けている。また、誰もが気軽に相談に来られるように、看護部長室の扉をいつも開けているという。
新病院となって地域の小学生が仕事見学の一つとして同病院に初めてやってきた。「これも地域貢献の一つです。将来、子どもたちの中から医療従事者が生まれたら素晴らしいですね」と後藤氏はにこやかに話す。
今回、取材スタッフが乗ったタクシーの運転手が「三橋明生病院から乗る患者さんたちは、よそではしてくれない手術をこの病院はしてくれると喜んでいますよ」と教えてくれた。新病院が新たな取り組みを始めてまだ数カ月だが、すでに地域の人々は新病院へ厚い信頼を寄せている。

患者を支える他職種のスタッフが集まるスタッフステーション

亥鼻城址(通称・千葉城)を臨む病室
取材・文/荻 和子 撮影/轟 美津子 写真提供/三橋明生病院
